住吉義光 (すみよし・よしてる)

玄々堂木更津クリニック院長。1979年徳島大学医学部卒業、81年国立病院四国がんセンター泌尿器科、85年徳島市民病院泌尿器科、89年国立病院四国がんセンター泌尿器科医長、2005年国立病院機構四国がんセンター第一病棟部長を経て、現職。代替医療については、厚生労働省がん研究助成金「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班で主任研究者を務める。

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がんの患者さんの多くが健康食品を利用している

がんの患者さんの中には、医療機関で行われる治療以外に、補完代替医療を利用する人がたくさんいることは以前から知られていた。一体どのくらいの人が、どのような補完代替医療を行っているのだろうか。厚生労働省がん研究助成金による研究班(主任研究者:兵頭一之介 筑波大学教授)が、調査を行い、その結果はジャーナル・オブ・クリニカルオンコロジー(JCO23巻2645頁)に掲載された。その調査によれば、1種類以上の補完代替医療を行っている人は、がんの患者全体の44.6パーセントとなっている。つまり、半数近くの患者さんが、何らかの補完代替医療を利用しているわけだ。

どのような補完代替医療を行っているかを調べた結果によると、健康食品(サプリメント・漢方薬・ビタミンを含む)を利用する人が圧倒的に多い。複数回答で重複はあるのだが、補完代替医療を行っているがん患者の内、実に96.2パーセントの人が、健康食品を利用していることがわかった。四国がんセンター在任当時、この研究班を引き継ぎ主任研究者であった住吉義光さんによれば、健康食品の利用が多いのは、日本の補完代替医療の特徴なのだという。

「外国にも補完代替医療はありますが、このような極端な偏りはないようです。日本では補完代替医療といえば、健康食品を意味するといっても過言ではありません。さらに、キノコ類による健康食品を利用する人が多いのも、日本の補完代替医療の大きな特徴です」

どのような健康食品が使われているかを調べた前述の調査(複数回答)では、アガリクスが60.6パーセント、シイタケを材料とするAHCC(※1)が7.4パーセントとなっている。キノコ系健康食品を利用する人が確かに多い。

「この調査が行われた頃に比べると、アガリクスを利用している人の割合は減っているかもしれません。ただ、それにしてもキノコ類の健康食品がよく使われているのは事実です」

それ以外の健康食品では、プロポリスが28.8パーセントで比較的多く、漢方薬が7.1パーセント、キチン・キトサン(※2)が7.1パーセント、サメ軟骨が6.7パーセントとなっている。

※1 AHCC=Active Hexose Correlated Compound。数種類のキノコの菌糸体を培養して抽出した「活性化多糖類関連化合物」を主成分としたもの
※2 キチン・キトサン=カニ殻やエビ殻に多く含まれる天然多糖類

癌の補完代替医療ガイドブック

問題は何を目的として利用するかにある

こうした健康食品を中心とする補完代替医療を、患者さんたちはどのような目的で利用しているのだろうか。同調査はこうした問題も明らかにしている。

それによれば、『がんの進行抑制』が67.1パーセント、『治療』が44.5パーセント、『症状緩和』が27.1パーセント、『通常医療を補完するため』が20.7パーセントだった。

「補完代替医療や健康食品を否定するつもりはありませんが、その目的が問題です。調査でも明らかになっていますが、多くの患者さんが目的としているのは、がんの進行を抑えたり、がんを治したりすることです。健康食品を販売する側も、そういう効果をにおわせて売っている場合がありますね。患者さんが、がんを治すという目的で健康食品を使うのであれば、それは問題でしょう」

なぜ問題なのかといえば、現在のところ、補完代替医療や健康食品でがんが治ることを証明した臨床試験のデータはないからだ。がんの治療の中心となる手術療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法などは、多くの研究データによって、一定以上の効果が期待できることが明らかになっている。それに比べ、補完代替医療には、現在のところ研究データがほとんどない。

「医療機関で行われるメインの治療を補完するものとして利用するのであれば、それなりの結果が得られることもあるでしょう。補完代替医療は、何を目的とするのかというところを間違えないことが大切ですね」

あくまでも、がんの治療を補完するという目的で利用して欲しい。これが住吉さんの意見である。